藤木屋の想い

着物を着て、街を歩くと、「いいですね。」と声をかけられることがあります。時々「落語家さんですか?」と言われる場合もありますが(汗)

私は茶道を趣味にしていることもあり、かねてより着物を着る機会はありました。しかし、そのほとんどは祖父のお下がりであり、私にとって着物は茶道の練習着でしかなく。懐紙や袱紗を入れる場所があれば、それでことが足りたのが20代の私の着物に対する印象でした。

私の周りにいる茶道関係者は全て女性であり、男着物に関する情報は全く入って来ませんでした。20代後半、それまで着ていた祖父のお下がりの着物が痛んでしまい、着られなくなってしまったので、新しく買うことになったのですが、そこで事件が起こりました。

自分が買いたい男着物の店が無かったのです。

私はアパレルメーカーに就職し、百貨店で紳士服を販売してきました。なので、百貨店には馴染みがあったのですが、残念ながら、百貨店で取り扱っている着物には金額的な面から手が出ませんでした。こういう場合、リサイクル着物・中古着物のお店に行くことになると思うのですが、私もそうでした。

リサイクル着物は、非常にリーズナブルであり、保存状態が良い物もあるのですが、残念ながら商品量そのものが少ないです。お店にはたくさん在庫があるのですが、9割がレディース着物です。また、リサイクル着物というのは、昔の日本人男性がオーダーした着物です。戦後、日本人の体格は大きく変化し、この50年で日本人男性の平均身長は10cm以上も伸びています。なので、現在の日本人男性の平均身長170cmちょっとが着られるリサイクル着物というのは非常に希少であり、またサイズがあったとしても、いくつかある中から選べるわけではなく、「サイズがあるから買う」という状況になっています。

先にも述べましたが、私はファッション業界で働いてきました。初めて着物を自分で買う時に、この状況に愕然としました。着物も着る物、衣料品であって、アパレルであり、ファッションではないのではなかろうか?ましてや日本の文化であって、こういう状況だから、呉服業界は衰退しているのではないのかと思いました。着る人が減っている、着物に興味を持っている人が減っているのではなく、着物を着たいと思っても、それをかなえてくれるお店が無いだけなのでは。

そこで、自分が買いたいと思う、男の着物を販売するショップを作ろうと決意しました。私は呉服業界で働いたことはありません。しかし、これまで培ってきた紳士テーラード・スーツの採寸技術を和装に応用し、和裁と洋裁を独自な視点で融合することによって、お客様からの限られた情報をもって、男着物のオンラインオーダーメード受注を可能にしました。

着物を着て、是非、街を歩いてみてください。男の着物というのは、少し勉強すれば、着るのが簡単です。また女性の着物とは違い、厳しい目もあまり感じません。ただ着物を着ていれば、街では「素敵ですね」と声を掛けられるかもしれません。是非、おためしくださいませ。

株式会社藤木屋 代表取締役社長 藤木屋幹助


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